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全然SLじゃないですが。
ジェネリック医薬品って効きにくいときありませんか?
この技術的な理由を解説してるサイトがググっても見つからないので解説したいと思います。
なお、ここで解説するのは、よくある錠剤と顆粒についてで、シロップのような液状薬には当てはまりません。
◆成分は同じ、製法も同じ
まず、薬の製造についてお話しします。薬の製造には、原料から中間体を作る、中間体から原薬を作る、原薬から製品を作る、の3つのステージがあります。この、原薬の製造までの過程は法律でガチガチに縛られており、ちょっとした変更も認められません。なので、新薬(先発医薬品)でも、ジェネリック(後発医薬品)でも、成分的にはまったく同じです。
◆ジェネリックが安い2つの理由
よく語られる「ジェネリックが安い理由」は、新薬のような、研究開発や臨床試験がいらないから、というものです。でもこれは半分だけ当たり。もう一つ、決定的な理由があるんですが、あまり語られません。技術的で分かりづらいから。
さきほど3つのステージがあるという話をしましたが、原薬の製造までは基本的に変えられないため、コストはまったく一緒です。ただ、原薬から製品を作る過程は別。ここは、ケチろうと思えばいくらでもケチれて、なんの法律にも触れない部分です。ジェネリックの多くはここをケチるので、安上がりになっています。その結果、成分は同じなのに薬効の違う製品が出来上がってきます。
◆成分が同じでも薬効が違う?
ほとんどの人は、成分が同じなら薬効は同じ、って思っているかも?でも、本当は全然違うんです。
医薬・化学の専門的にその理由を述べますと、粒度分布が異なる場合溶解速度に差があり、曝露量や曝露時間に差が生じるため薬効が異なってくることがある、となります。この説明で納得出来るのは技術者くらいだと思いますので、ちょっと解説します。
◆溶けやすさという概念
人間が飲む薬の大半は水溶性です(たまに脂溶性のもあります)。ようは、水に溶けることが効果発現の要件になるのですが、この「溶けやすさ」は薬によって千差万別。一見、溶けたようにみえていても、実際は溶解していないときもあります。
溶解しやすいものを作るためには、薬の粒子の直径をとても小さくすることが一般的です。なので、原薬から製品を作る過程では、原薬を細かく砕きます。
◆溶けるスピードの違い
細かく砕く方法ですが、すり潰す(擂潰機など)という方法以外に、風圧で飛ばして壁にぶつけて割る(ジェットミルなど)、ハンマーで叩く(スパイクミルなど)といったように、いろいろな方法があります。
それらの方法で砕いた粉ですが、どの粒子も均一な大きさになっているかというと、まったくそんな事はなく、大きいのもあれば小さいのもある、という感じでバラバラの大きさです。元に比べたら小さくなっているというだけ。
これらを水に入れたら、どうなるでしょう?小さい粒子は早く溶け、大きい粒子は溶けるのが遅くなります。
◆曝露量・曝露時間について
薬効を決める概念には、受容体理論による化学反応的なものと、作用部位における薬物濃度の2つがあります。要は、質と濃さですね。
粒子の大きさが同じであれば、溶ける時間も同じになりますから、生理現象での分解速度を上回って薬物濃度は高くなります。なのでよく効く薬になるわけです。
一方で、粒子の大きさがまちまちであれば、完全に溶けるまで時間がかかったり、ずっと早く溶けてしまったりして、ある時点における薬物濃度は低くなってしまい、あまり効かない薬になってしまいます。
ちょっと脱線しますが、錠剤は一つの大きな粒子というわけではなく、一度細かくしたものをぎゅっと圧縮してあの形にしてあるだけで、溶解度にはあまり影響しなくなっています。
◆粒子の大きさを一定にするには?
さて、粒子の大きさの分布(粒度分布)を一定にしたほうが、溶けたあとの薬物濃度の最大値が高くなる事はお分かりかと思います。
では、その粒度分布を一定にするにはどうしたらいいでしょうか。
なにか特殊な粉砕方法がある?答えはNoです。分布の幅を狭める事は若干できますが、一定にまですることはできないんです。
そこで登場するのが、分級という方法。篩(フルイ)にかけたり、風で飛ばして落ちる位置によって分けたりして、一定のサイズだけに分ける、というものです。
◆分級すると収率が大きく下がる
分級というのは、全体の中から、ある一部分だけを取り出すという方法ですから、それ以外の部分は必要なくなります。このときの収率は、上手にやったとしても50%くらい。半分取れれば良い方です。残り半分はいらない部分ですけど、さらにその半分(つまり25%)は粒度が大きい部分ですから、再度粉砕して分級するという再利用ができます。
小さい方の25%はどうするかというと、多くの場合、もったいないけど捨ててしまいます。粒度を大きくするための操作は化学的なものになりやすく、原薬を化学処理することになって、法的な問題が出てしまうためです。
◆効く薬は高く、効かない薬は安く
粒子の大きさが一定の薬は、溶解時間が同じになって体内での濃度が高くなりやすいため、よく効きます。粒径を一定にするためには分級が必要になり、上手く操作しても最大で75%を超える事はないため、捨ててしまった25%を上乗せして売るしかなく、高くなってしまいます。
一方、こういった分級を行わず、原薬を100%使って作れば、粒度分布がバラバラなので濃度は稼げず、あんまり効かなくはなりますが、安上がりにはなりますね。実際には、材料費以外に分級の手間も設備も不要ですから、もっと差は大きくなるはずです。
バフ○リンはよく効くのに、バニ○サンはあんまり・・・という技術的な理由は、こんなところです。
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